(このレジュメは下記のPodcastの収録時に使用したものです。音声と一緒にお楽しみください!)
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基本情報の整理
「音楽がお金に変えづらい(?)」問題
- 音楽がお金に変えづらい ≒ 音楽が売れない、儲からない
(経済学的な表現を用いれば)市場メカニズムの効率性が低い
- 音楽をお金に変えづらい状況では、文化的価値の創造によって経済的自立が果たされない。関わろうとする人が増えないので、文化的価値の生産量・質が高まりづらい。
- 音楽で(経済的に)成功するというインセンティブがあることで、プレイヤーの増加、新規性の高い作品の創造や、新しい需要の掘り起こしなどが行われる。(音楽に限らず、資本経済主義は、市場メカニズムの力によって人々に豊かな生活を届けようとする狙いがある。)
- 音楽の売上が減少すると、ある水準のセールスを確実に期待できるジャンルやアーティストにプロモーションを絞る傾向が生まれる *1。
→ 文化の供給側の販売戦略がより保守的なものになることで、音楽の多様性は減少し、周縁的な音楽や先端的な音楽が私たちの目にする場所から姿を消すことになる。
音楽市場の流通金額
(出所:IFPI issues Global Music Report 2021)
- 現在、音楽市場は拡大傾向にある。2014年までは縮小傾向にあり、2015年から復調した。
- いまの音楽市場はストリーミング・サービスによって支えられている状況である。
- グローバルトレンドとしては「音楽はお金に変えやすく」なっている?
- 2020年における音楽市場規模の国別ランキングでは、アメリカ(+7.3%)、第2位日本(-2.1%)、第3位イギリス(+2.2%)、第4位ドイツ(+5.1%)、第5位フランス、第6位韓国(+44.8%)、第7位中国、第8位カナダ(+8.1%)、第9位オーストラリア(+3.3%)、第10位オランダとなり、トップ9は2019年と同様になった(※2019年の第10位はブラジル)*2。
市場以外からの資金注入
行政による支援、個人による寄附に関するデータ。本項のグラフは文化庁『文化芸術関連データ集』『令和元年度文化庁委託事業「諸外国の文化政策等に関する比較調査研究」』をもとに作成した。
国家予算に占める文化支出比率の比較(2019年度調べ、単位:%)
- 韓国では、1990年代の終わりから文化振興を政府の大きな目標と、21世紀を「文化の世紀」と位置づけ、コンテンツ振興策を行なった。(2000年代:冬のソナタ、韓流ブーム、2010年代:少女時代、KARA、2020年代:BTS、TWICE、NiziU …)
- 韓国人アーティストの海外プロジェクトにかかる総事業費の50%(最大1億ウォン)までプロダクションに補助する政策がある *3。
GDPに占める寄附の割合(2014年度調べ、単位:%)
- アメリカは文化予算の比率はほとんどゼロだが、寄付による民間支援が大きな役割を果たしていると考えられる。
文化支出を国民一人当たりに換算した金額の比較(2019年度調べ、単位:円)
- 人口を考慮すると、イギリスやドイツの支出額が決して低いわけではないことが分かる。
文化支出の推移(2010 - 2019年)
音楽をお金に変えるための手法・工夫など
- 旧来の事例:CD販売、放送局やカラオケからの権利収入(著作権印税、原盤印税、アーティスト印税)、ライブのチケット収入、グッズ販売、ブランドとのコラボ・商品タイアップ、レンタルCDショップからの使用料、ファンクラブの会員費、音楽教室や専門学校の講師など
- 近年の事例:デジタル配信・ストリーミングからの印税、動画配信プラットフォームにおける広告収入、ギフティング(投げ銭)、オンライングッズ(Zoom券)の販売、オンラインサロン、クラウドファウンディング、プレイリスターやセレクターなど
議題の設定
音楽をお金にするための方法や環境はどう変化しているか、どのような問題が起きているか。
文化的なコンテンツの商品の性質、ビジネスの方法、その実情を理論的・実証的に考察していく。
- 【論点例 1】音楽をお金にするための方法や環境の変化を論じる。
- 【論点例 2】国内・国外の状況を比較し、国外の事例から参考にすべき点、国内の状況で優位な点などを議論し「音楽をお金に変える」ための望ましい状況を検討する。
- 【論点例 3】国外・国外市場の関係性を考える。
→ 音楽コンテンツの輸入・輸出、グローバリゼーションなど