2021-07-03 スポーツ化する日本語MCバトルとHIP-HOPの「非競技性」 レジュメ (このレジュメは下記のPodcastの収録時に使用したものです。音声と一緒にお楽しみください!) 基本情報の整理 日本語MCバトル史*1 スポーツ化の要因 【参考】MCバトル大会の人気 スポーツと「非競技性」 議題の設定 スポーツ化するMCバトルについて、今後の展望を考える 基本情報の整理 日本語MCバトル史*1 MCバトルの胎動1990年代初頭、クラブでのライブ後に開かれるオープンマイクから突発的に発生するものだった。ネットが普及する以前で、HIP-HOPヘッズの中で共有されている「儀礼的な乱入」として存在していた。 B BOY PARKZeebraやRHYMESTERの宇多丸らが中心となって企画を実現させた。初回から第三回までKREVAが優勝を続け、「クレバ・スタイル」という技法が成立する。◯クレバ・スタイル:即興性のアピール、丁寧で確実な脚韻、単調な韻の振り落とし MCバトル大会の隆盛2000年代なかばから後半にかけて、「ULTIMATE MC BATTLE」が2005年に、「戦極MCBattle」が2007年に、「MC BATTLE THE 罵倒」が2008年に開催されるなど、MCバトルシーンが拡大・多様化する。 「技術的」なMCの台頭晋平太が2010年、2011年とUMBを連覇し、R-指定は2012年から2014年にかけてを三連覇する。また同時期に「高校生ラップ選手権」がBSスカパーで放送を開始。 2015年「フリースタイルダンジョン」放送開始これを機にMCバトル人気が爆発。CMにラッパーが起用されたり、高校生ラップ選手権が武道館で開催されたりなど、MCバトルがメジャーシーンにも見られるようになる。 スポーツ化の要因 客層の一般化対立に至る構図や文脈を審査員も務める観客が共有しなくなり、ヒップホップシーンのラッパーがバトルと距離を置くようになる ヒップホップとMCバトルの乖離大会の優勝者が音源を発表してヒットする構造が崩れ、アーティスト活動が軸のヒップホップシーンとMCバトルシーンの志向にズレが生じる→こうした要因によって、ラッパーたちはMCバトルに最適化していった。技術を競うスポーツ化が進み、一般層には親しみやすい、しかしヒップホップの理念とは乖離した状況となる 【参考】MCバトル大会の人気 Nome X (北米)YouTubeフォロワー129万人 www.youtube.com King Of The Dot Entertainment(カナダ)YouTubeフォロワー85.7万人 www.youtube.com Red Bull Batalla(スペイン語圏)YouTubeフォロワー620万人 www.youtube.com UMB(日本)YouTubeフォロワー17.7万人 www.youtube.com 凱旋MCBattle(日本)YouTubeフォロワー31.2万人 www.youtube.com 戦極MCBattle(日本)YouTubeフォロワー43.8万人 www.youtube.com スポーツと「非競技性」 「スポーツの社会学」竹之下休蔵 磯村英一 1965「現代スポーツを特徴づける傾向として、大衆化、高度化、企業化(プロ化)があげられる。これらはいずれも、19世紀以降、とくに今世紀に入ってからの激しい社会変化と関連するものである」 「非競技性」の抱える問題・M-1における「笑いの手数」の増加 kinob5.hatenablog.com ・フィギュアスケートにおける「ナショナルバイアス」の問題 fsfanforfuture.hatenablog.com 議題の設定 スポーツ化するMCバトルについて、今後の展望を考える 論点① MCバトルにおける「非競技性」とは何か 論点② 日本において、なぜスポーツ化が進んだのか 論点③ 今後の日本語ラップシーンはどこへ向かうのか 福村暁 1995年生まれ。構成作家。好きなジャンル:文化人類学、世界史、文学、料理など。 Twitter : https://twitter.com/namahoge_f *1:参照:ダースレイダー『MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門』